おきつやごえもんのいしょ(しょこう)
興津弥五右衛門の遺書(初稿)

冒頭文

某(それがし)儀(ぎ)今年今月今日切腹して相果(あいはて)候(そろ)事いかにも唐突(とうとつ)の至(いたり)にて、弥五右衛門奴(め)老耄(ろうもう)したるか、乱心したるかと申候者も可有之(これあるべく)候(そうら)えども、決して左様の事には無之(これなく)候(そろ)。某(それがし)致仕(ちし)候てより以来、当国船岡山(ふなおかやま)の西麓(さいろく)に形ばかりなる草庵(そうあん)を営み罷在(まかり

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1912(大正元)年10月

底本

  • カラー版日本文学全集7 森鴎外
  • 河出書房新社
  • 1969(昭和44)年3月30日