ふるさと〔とびらのことば〕 |
故郷〔扉の言葉〕 |
冒頭文
家郷忘じ難しという。まことにそのとおりである。故郷はとうてい捨てきれないものである。それを愛する人は愛する意味に於て、それを憎む人は憎む意味に於て。 さらにまた、予言者は故郷に容れられずという諺もある。えらい人はえらいが故に理解されない、変った者は変っているために爪弾きされる。しかし、拒まれても嘲られても、それを捨て得ないところに、人間性のいたましい発露がある。錦衣還郷が人情ならば、襤褸
文字遣い
新字新仮名
初出
「「三八九」復活第四集」1932(昭和7)年12月15日
底本
- 山頭火随筆集
- 講談社文芸文庫、講談社
- 2002(平成14)年7月10日