あめばけ
雨ばけ

冒頭文

あちこちに、然(しか)るべき門は見えるが、それも場末で、古土塀(ふるどべい)、やぶれ垣(がき)の、入曲(いりまが)つて長く続く屋敷町(やしきまち)を、雨(あま)もよひの陰気な暮方(くれがた)、その県の令(れい)に事(つか)ふる相応(そうおう)の支那(しな)の官人が一人、従者を従(したが)へて通り懸(かか)つた。知音(ちいん)の法筵(ほうえん)に列するためであつた。 ……来かゝる途中に、大

文字遣い

新字旧仮名

初出

「随筆」1923(大正12)年11月

底本

  • 日本幻想文学集成1 泉鏡花
  • 国書刊行会
  • 1991(平成3)年3月25日