表紙の画(え)の撫子(なでしこ)に取添えたる清書(きよがき)草紙、まだ手習児(てならいこ)の作なりとて拙(つたな)きをすてたまわずこのぬしとある処に、御名(おんな)を記させたまえとこそ。 明治三十五年壬寅正月 鏡花 一 「どうも相済みません、昨日(きのう)もおいで下さいましたそうで毎度恐入ります。」 と慇懃(いんぎん)にいいながら、ばりかんを持って椅