にせのちぎり |
二世の契 |
冒頭文
一 真中に一棟(ひとむね)、小さき屋根の、恰(あたか)も朝凪(あさなぎ)の海に難破船の俤(おもかげ)のやう、且(か)つ破れ且つ傾いて見ゆるのは、此(こ)の広野(ひろの)を、久しい以前汽車が横切(よこぎ)つた、其(そ)の時分(じぶん)の停車場(ステエション)の名残(なごり)である。 路(みち)も纔(わずか)に通ずるばかり、枯れても未(ま)だ葎(むぐら)の結(むす)ぼれた上へ、煙の如く
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新小説」1903(明治36)年1月
底本
- 日本幻想文学集成1 泉鏡花
- 国書刊行会
- 1991(平成3)年3月25日