はくしゃくのかんざし |
伯爵の釵 |
冒頭文
一 此(こ)のもの語(がたり)の起つた土地は、清きと、美しきと、二筋(ふたすじ)の大川(おおかわ)、市(し)の両端を流れ、真中央(まんなか)に城の天守(てんしゅ)尚(な)ほ高く聳(そび)え、森黒く、濠(ほり)蒼(あお)く、国境の山岳は重畳(ちょうじょう)として、湖を包み、海に沿ひ、橋と、坂と、辻の柳、甍(いらか)の浪(なみ)の町を抱(いだ)いた、北陸の都である。 一年(ひととせ)、
文字遣い
新字旧仮名
初出
「婦女界」1920(大正9)年1月
底本
- 日本幻想文学集成1 泉鏡花
- 国書刊行会
- 1991(平成3)年3月25日