くさみち |
草みち |
冒頭文
一 『此方の方に来たことはあつて?』 『いゝえ』 『でも、小さい時には遊びに来たことはあるでせう? そら上水(じやうすゐ)の岸で、つばなや何か取つたことがあるぢやないの?』 『さうだつたかしら?』 妹の種子は考へるやうにして言つた。 『あなた忘れつぽい人ね。そら、四国にゐる姉さんがまだ家にゐた時分よ。よく一緒に行つたぢやないの? ほら、あの肥(ふと)つた喜代子さんといふ姉さ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「若草 第一巻第一号」1925(大正14)年10月1日
底本
- 定本 花袋全集 第二十二巻
- 臨川書店
- 1995(平成7)年2月10日