じないのきじんだん
寺内の奇人団

冒頭文

水族館の近所にある植込を見ると茶の木が一、二本眼につくでしょう。あれは昔の名残(なごり)で、明治の初年には、あの辺一帯茶畠で、今活動写真のある六区は田でした。これが種々の変遷(へんせん)を経て、今のようになったのですから、浅草寺寺内のお話をするだけでもなかなか容易な事ではありません。その中で私は面白い事を選んでお話しましょう。 明治の八、九年頃、寺内にいい合わしたように変人が寄り集りまし

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」第17年第4巻、1912(明治45)年4月、「聖潮」第2巻第10号、1925(大正14)年11月

底本

  • 梵雲庵雑話
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1999(平成11)年8月18日