とうりゅうひかくげんごがく
当流比較言語学

冒頭文

或る國民には或る詞が闕けてゐる。 何故(なぜ)闕けてゐるかと思つて、よく〳〵考へて見ると、それは或る感情が闕けてゐるからである。 手近い處で言つて見ると、獨逸語に Streber といふ詞がある。動詞の streben は素と體(からだ)で無理な運動をするやうな心持の語であつたさうだ。それからもがくやうな心持の語になつた。今では總て抗抵を排して前進する義になつてゐる。努力するの

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「東亞の光 第四卷第七號」1909(明治42)年7月1日

底本

  • 鴎外全集 第二十六卷
  • 岩波書店
  • 1973(昭和48)年12月22日