「こくしかんさつじんじけん」ちょしゃのじょ |
「黒死館殺人事件」著者之序 |
冒頭文
「黒死館殺人事件」の完成によって、それまで発表した幾つかの短篇は、いずれも、路傍の雑草のごとく、哀われ果敢(はか)ないものになってしまった。のみならず、本篇が「新青年」に連載中は、褒められるにも、誹(そし)られるにも、悉く最大級の用語を以ってせられた。事実、その渦の中で、私は散々に揉み抜かれたのである。恐らく、日本に探偵小説が出現して以来、かくも私ほど、敵視された作家も、例(ため)しなかったことで
文字遣い
新字新仮名
初出
「黒死館殺人事件」新潮社、1935(昭和10)年5月
底本
- 日本探偵小説全集6 小栗虫太郎集
- 創元推理文庫、東京創元社
- 1987(昭和62)年11月27日