一 善(ぜん)ニョムさんは、息子達夫婦が、肥料を馬の背につけて野良へ出ていってしまう間、尻骨の痛い寝床の中で、眼を瞑(つぶ)って我慢していた。 「じゃとっさん、夕方になったら馬ハミ(糧)だけこさいといてくんなさろ、無理しておきたらいかんけんが」 出がけに嫁が、上(あが)り框(かまち)のところから、駄目をおして出ていった。 「ああよし、よし……」 善ニョムさんは、そう寝