いわなみぶんころん |
岩波文庫論 |
冒頭文
編集部より岩波文庫について語れとの話ですから、思いつくままを申し上げます。現在は文庫時代ともいってよいほど各種の廉価版が行なわれ、どこにおいても欲しいものが自由に求められることになっているが、今より十数年前は予約出版の円本が流行して一世を風靡したのである。この流行によって学芸が一般に普及した功績は認めねばならぬが、また一方、好ましくない影響も少なくなかった。特に編集、翻訳、普及の方法などにははなは
文字遣い
新字新仮名
初出
「東京帝国大学新聞」1938(昭和13)年9月19日
底本
- 出版人の遺文 岩波書店 岩波茂雄
- 栗田書店
- 1968(昭和43)年6月1日