わがやのえんげい
我家の園芸

冒頭文

目黒へ移ってから三年目の夏が来るので、彼岸過ぎから花壇の種蒔(たねま)きをはじめた。旧市外であるだけに、草花類の生育は悪くない。種をまいて相当の肥料をあたえておけば、先(ま)ず普通の花はさくので、我々のような素人(しろうと)でも苦労はないわけである。 そこで、毎年慾張って二十種乃至(ないし)三十種の種をまいて、庭一面を藪のようにしているのであるが、それでは藪蚊の棲家(すみか)を作る虞(お

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」1935(昭和10)年6月10日号

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日