めぐろのてら
目黒の寺

冒頭文

住み馴れた麹町(こうじまち)を去って、目黒に移住してから足かけ六年になる。そのあいだに『目黒町誌』をたよりにして、区内の旧蹟や名所などを尋ね廻っているが、目黒もなかなか広い。殊(こと)に新市域に編入されてからは、碑衾町(ひぶすまちょう)をも包含することになったので、私のような出不精の者には容易に廻り切れない。 ほか土地はともあれ、せめて自分の居住する区内の地理だけでも一通りは心得ておくべ

文字遣い

新字新仮名

初出

「短歌研究」1938(昭和13)年11月号

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日