はんしちとりものちょうのおもいで
半七捕物帳の思い出

冒頭文

初めて「半七捕物帳」を書こうと思い付いたのは、大正五年の四月頃とおぼえています。そのころ私はコナン・ドイルのシャアロック・ホームスを飛び飛びには読んでいたが、全部を通読したことがないので、丸善へ行ったついでに、シャアロック・ホームスのアドヴェンチュアとメモヤーとレターンの三種を買って来て、一気に引きつづいて三冊読み終ると探偵物語に対する興味が油然(ゆうぜん)と湧き起って、自分もなにか探偵物語を書い

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1927(昭和2)年8月号

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日