どくしょざっかん |
読書雑感 |
冒頭文
何といってもこの頃は読書子に取っては恵まれた時代である。円本は勿論、改造文庫、岩波文庫、春陽堂文庫のたぐい、二十銭か三十銭で自分の読みたい本が自由に読まれるというのは、どう考えても有難(ありがた)いことである。 趣味からいえば、廉価版の安っぽい書物は感じが悪いという。それも一応はもっともであるが、読書趣味の普及された時代、本を読みたくても金がないという人々に取っては、廉価版は確(たしか)
文字遣い
新字新仮名
初出
「書物展望」1933(昭和8)年3月号
底本
- 岡本綺堂随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 2007(平成19)年10月16日