しゅぜんじものがたり ――めいじざごがつこうぎょう――
修禅寺物語 ――明治座五月興行――

冒頭文

この脚本は『文芸倶楽部(ぶんげいくらぶ)』の一月号に掲載せられたもので、相変らず甘いお芝居。頼家が伊豆の修禅寺で討れたという事実は、誰も知っていることですが、この脚本に現われたる事実は全部嘘です。第一に、主人公の夜叉王(やしゃおう)という人物からして作者が勝手に作り設けたのです。 一昨々年(さきおととし)の九月、修禅寺の温泉に一週間ばかり遊んでいる間に、一日(あるひ)修禅寺に参詣(さんけ

文字遣い

新字新仮名

初出

「美芸画報」1911(明治44)年6月号

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日