くぼたべいさいくんのおもいで |
久保田米斎君の思い出 |
冒頭文
久保田米斎君の事に就て何か話せということですが、本職の画の方の事は私にはわかりませんから、主として芝居の方の事だけ御話するようになりましょう。これは最初に御断りしておきます。 たしかな事はいえませんが、私の知っている限りでは、米斎君がはじめて舞台装置をなすったのは、明治三十七年の四月に歌舞伎座で、森鴎外博士の『日蓮上人辻説法』というものを上演しました。その時分に御父さんの米僊先生がまだ御
文字遣い
新字新仮名
初出
「伝記」1937(昭和12)年6月号
底本
- 岡本綺堂随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 2007(平成19)年10月16日