ぎんざのあさ
銀座の朝

冒頭文

夏の日の朝まだきに、瓜の皮、竹の皮、巻烟草(まきたばこ)の吸殻さては紙屑なんどの狼籍(ろうぜき)たるを踏みて、眠れる銀座の大通にたたずめば、ここが首府(みやこ)の中央かと疑わるるばかりに、一種荒凉の感を覚うれど、夜の衣(ころも)の次第にうすくかつ剥(は)げて、曙(あけぼの)の光の東より開くと共に、万物(ばんぶつ)皆生きて動き出ずるを見ん。 車道と人道の境界(さかい)に垂れたる幾株の柳は、

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1901(明治34)年7月号

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日