かたきうちざっかん
かたき討雑感

冒頭文

◇ わが国古来のいわゆる「かたき討(うち)」とか、「仇討(あだうち)」とかいうものは、勿論それが復讎(ふくしゅう)を意味するのではあるが、単に復讎の目的を達しただけでは、かたき討とも仇討とも認められない。その手段として我が手ずから相手を殺さなければならない。他人の手をかりて相手をほろぼし、あるいは他の手段を以て相手を破滅させたのでは、完全なるかたき討や仇討とはいわれない。真向正面から相手を屠

文字遣い

新字新仮名

初出

「歌舞伎 臨時増刊号」1925(大正14)年9月

底本

  • 岡本綺堂随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2007(平成19)年10月16日