おほりばたさんだい |
御堀端三題 |
冒頭文
一 柳のかげ 海に山に、凉風に浴した思い出も色々あるが、最も忘れ得ないのは少年時代の思い出である。今日の人はもちろん知るまいが、麹町(こうじまち)の桜田門外、地方裁判所の横手、後に府立第一中学の正門前になった所に、五、六株の大きい柳が繁っていた。 堀ばたの柳は半蔵門から日比谷まで続いているが、ここの柳はその反対の側に立っているのである。どういうわけでこれだけの柳が路(みち)ばたに取
文字遣い
新字新仮名
初出
柳のかげ「文藝春秋」1937(昭和12)年8月、怪談「モダン日本」1936(昭和11)年9月、三宅坂「文藝春秋」1935(昭和10)年8月
底本
- 岡本綺堂随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 2007(平成19)年10月16日