おうがいはかせのついおく |
鴎外博士の追憶 |
冒頭文
若い蘇峰(そほう)の『国民之友』が思想壇の檜舞台(ひのきぶたい)として今の『中央公論』や『改造』よりも重視された頃、春秋二李の特別附録は当時の大家の顔見世(かおみせ)狂言として盛んに評判されたもんだ。その第一回は美妙の裸蝴蝶で大分前受けがしたが、第二回の『於母影(おもかげ)』は珠玉を満盛した和歌漢詩新体韻文の聚宝盆(しゅうほうぼん)で、口先きの変った、丁度果実(くだもの)の盛籠(もりかご)を見るよ
文字遣い
新字新仮名
初出
「明星」1922(大正11)年8月号
底本
- 新編 思い出す人々
- 岩波文庫、岩波書店
- 1994(平成6)年2月16日