ふたばていしめい ――いこうをせいりして――
二葉亭四迷 ――遺稿を整理して――

冒頭文

二葉亭四迷の全集が完結してその追悼会が故人の友人に由て開かれたについて、全集編纂者の一人としてその遺編を整理した我らは今更に感慨の念に堪えない。二葉亭が一生自ら「文人に非ず」と称したについてはその内容の意味は種々あろうが、要するに、「文学には常に必ず多少の遊戯分子を伴うゆえに文学ではドウシテも死身になれない」と或る席上で故人自ら明言したのがその有力なる理由の一つであろう。が、文学には果して常に必ず

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」1913(大正2)年9月

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日