やまみち |
山道 |
冒頭文
大正十何年の五月、甲斐(かい)の国の塩山(えんざん)の駅から大菩薩峠(だいぼさつとうげ)に向って馬を進めて行く一人の旅人がありました。 中折(なかおれ)の帽子をかぶって、脊広の洋服に糸楯(いとだて)、草鞋(わらじ)脚半(きゃはん)といういでたちで頬かむりした馬子に馬の口を取らせて、塩山からほぼ、三里の大菩薩峠を目ざして行く時は前にいった通り陽春の五月、日はまさしく端午(たんご)の当日であ
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1926(大正15)年7月
底本
- 山の旅 大正・昭和篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 2003(平成15)年11月14日