かんてんち |
閑天地 |
冒頭文
(一) (「閑天地」は実に閑天地なり。野鵰(やてう)の㯙雲(とんうん)に舞ひ、黄牛の草に眠るが如し。又春光野に流れて鳥初めて歌ひ、暮風清蔭に湧いて蜩(ひぐらし)の声を作(な)すが如し。未だ許さず、生きんが為めにのみ生き、行かんがためにのみ行くが如き人の、この悠々の世界に入るを。啄木、永く都塵に埋もれて、旦暮(たんぼ)身世(しんせい)の怱忙(そうばう)に追はれ、意ならずして故郷の風色に
文字遣い
新字旧仮名
初出
「岩手日報」1905(明治38)年6月9日~11日、13日~17日、20日~25日、27日~30日、7月6日、7日、18日。
底本
- 石川啄木全集 第四巻 評論・感想
- 筑摩書房
- 1980(昭和55)年3月10日