しょうねん
少年

冒頭文

プロロオグ 私はよく夢をみる。楽しい夢よりも、苦しい——胸ぐるしい夢の方がずつと多い。さめたあとで、ほとんど全経過をたどり直せるほど、はつきり覚えてゐる夢もある。さめた直後は、思ひ出す手がかりすら見失はれて、それなり忘れてゐたのが、かなり後になつて何のきつかけもなしに、ぱつと記憶に照らし出される夢もある。後者には概して楽しい夢が多いやうだ。 同じ主題がしばしば繰り返されるのは、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文學界」1951(昭和26)年11、12月号

底本

  • 雪の宿り 神西清小説セレクション
  • 港の人
  • 2008(平成20)年10月5日