おきなわのたび
沖縄の旅

冒頭文

一 沖繩まで 一月五日夕日の光に映ゆる壯嚴な櫻島の山影を後に、山崎君等の舊知に送られて、鹿兒島の港を後にした私は、土地の風俗や言葉を話す奄美大島や沖繩へ歸る人々の多くと同船して、早くも南島の氣分に漂はされた。船の名も首里丸である。幸にも此の冬の季節には珍らしい穩かな航海を續けて、夜は船長や事務長から恐ろしいハブの話や、不思議な島々の話に聞入り、次の日に大島の名瀬の港に大嶋紬の染織を見學し

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「ドルメン 第二號~第九號」1932(昭和7)年5~12月

底本

  • 青陵隨筆
  • 座右寶刊行會
  • 1947(昭和22)年11月20日