しぜんとひと
自然と人

冒頭文

人は自然を美しいといふ。然しそれよりも自然は美しい。人は自然を荘厳だといふ。然しそれよりも自然は荘厳だ。如何なる人が味到し色読したよりも以上に自然は美しく荘厳だ。議論としてそれを拒む人はあるかも知れないが、何等かの機会に於てそれを感じない人はない。 その時或人はかくばかり自然が美しく荘厳であるのにどうして人間はかくばかり醜く卑劣なのだと歎じ、そこに人類の救ひ得べからざる堕落を痛感するだら

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文化生活 第一卷第三號(八月號)」1921(大正10)年8月1日

底本

  • 有島武郎全集第八卷
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年10月20日