のうみんぶんかということ
農民文化といふこと

冒頭文

農民文化に就て話せといふことですが、私は文化といふ言葉に就いてさへ、ある疑ひを持つてゐるのでありまして、所謂今日文化と云はれてゐるのは、極く小数の人が享受してゐるに過ぎないのであつて、大多数者には何等及ぼす処の無いものであります。殊に農民文化と云ふに至つては、断然無いと云はなければならぬと思ひます。今日農民のおかれてゐる悲惨な境遇に、どうして文化などを生む余裕があり得ませう。     ◇

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文化生活の基礎 第三卷第六號(六月號)」1923(大正12)年6月1日

底本

  • 有島武郎全集第九卷
  • 筑摩書房
  • 1981(昭和56)年4月30日