ほうおんき
報恩記

冒頭文

阿媽港甚内(あまかわじんない)の話 わたしは甚内(じんない)と云うものです。苗字(みょうじ)は——さあ、世間ではずっと前から、阿媽港甚内(あまかわじんない)と云っているようです。阿媽港甚内、——あなたもこの名は知っていますか? いや、驚くには及びません。わたしはあなたの知っている通り、評判の高い盗人(ぬすびと)です。しかし今夜参ったのは、盗みにはいったのではありません。どうかそれだけは安心して下

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1922(大正11)年4月

底本

  • 芥川龍之介全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年1月27日