かみなりぎらいのはなし |
雷嫌いの話 |
冒頭文
びしょびしょと、鬱陶(うっとう)しい雨が降っている。雨垂れの音を聞きながら、私は、このペンを握っているのであるが、この文章が雑誌に載って、世の中へ出る時分には、カラッと晴れた暑い夏がやってくると思うと、私は、何ともいえぬ憂鬱(ゆううつ)な気持になってくる。 夏が、厭(いや)なのではない。夏につきものの、ゴロゴロピシャに、また二、三カ月、悩まされなければならぬのかと思うと、心底、気持が暗く
文字遣い
新字新仮名
初出
「旅」1952(昭和27)年8月
底本
- 橘外男ワンダーランド ユーモア小説篇
- 中央書院
- 1995(平成7)年12月4日