ジェラルド・ド・ネルヴァル |
ヂェラルド・ド・ネルヴァル |
冒頭文
今から百年ばかり前のことだ、仏蘭西はエルメンノンヴィユに近い一小村モンタニーの、或るお祭の日の黄昏(たそがれ)時、アドリンもその辺の娘達と草の上で踊るために出て来た。当時十八才のヂェラルド・ド・ネルヴァル——後世狂詩人として知られた男と——アドリンは図らずも一緒に踊ることとなつた。踊り終つてヂェラルドは彼女の頬に接唇し、彼女の頭髪に桂をかざしてやつた。彼は彼女が、今は昔恋の罪のために父君から塔の中
文字遣い
新字旧仮名
初出
「社会及国家」1929(昭和4)年10月号
底本
- 新編中原中也全集 第四巻 評論・小説
- 角川書店
- 2003(平成15)年11月25日