ししとけいざい |
志士と経済 |
冒頭文
一 幕末に取材する大衆文芸は一部志士文芸(?)でもあるが、志士活動の基底にどんな社会経済が横たわっているのかはっきりしないものが多い。股旅(またたび)物、三尺物の主人公が何で食っているかはいかにもはっきりしているが一歩すすんで、彼らの生活の物質的な地盤となっている社会経済——いわゆる旦那衆を構成する特定社会層の本質となると描かれていることがもう稀だ。筋の波瀾と離合のからくりが、いつかつく
文字遣い
新字新仮名
初出
「歴史科学」1934(昭和9)年10月号
底本
- 黒船前後・志士と経済他十六篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1981(昭和56)年7月16日