ぶかんふ |
武鑑譜 |
冒頭文
徳川時代を通じておこなわれていた「武鑑(ぶかん)」について、いまの若い人たちは知ることが少いであろう。 戦争まえまでは、古書展でもさまで珍しがられず、古地図などにくらべて値も安かった。銀座の松坂屋まえの露店に、十数年古本をあきなっている山崎さんなどは、この方面が好きで、いつも何冊か仕入れていたが、値は特別に安かった。 もっともそれは、わたしの漁(あさ)るものが珍品として値の高い
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1947(昭和22)年7月号
底本
- 黒船前後・志士と経済他十六篇
- 岩波文庫、岩波書店
- 1981(昭和56)年7月16日