ランプのかげ |
ランプの影 |
冒頭文
病(やまい)の牀(とこ)に仰向に寐てつまらなさに天井を睨(にら)んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のように見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪廓を形づくって居る。その顔が始終目について気になっていけないので、今度は右向きに横に寐ると、襖にある雲形の模様が天狗(てんぐ)の顔に見える。いかにもうるさいと思うてその顔を心で打ち消して見ると、襖の下の隅にある水か何かのしみ
文字遣い
新字新仮名
初出
「ホトトギス 第三巻第四号」1900(明治33)年1月10日
底本
- 飯待つ間
- 岩波文庫、岩波書店
- 1985(昭和60)年3月18日