たび

冒頭文

○旅はなさけ、恥はかきずて、宿屋に著きて先づ飯盛女(めしもりおんな)の品定め、水臭き味噌汁すすりながら、ここに遊君はありやといへば、ござりまする、片田舎とて侮(あなど)り給はば思はぬ不覚を取り給ふべし、などいふ、今の世の中に旅といふもの可愛い子にはさせまじき者なり。白河二所の関とは一夫道にあたりて万夫も進まざる恐ろしき嶮岨(けんそ)、鬼も出づべしと思ひきや、淋しき町はづれにいかめしき二階づくり、火

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ホトトギス 第二巻第十号」1899(明治32)年7月20日

底本

  • 飯待つ間
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1985(昭和60)年3月18日