きつね

冒頭文

非有想非無想処——大智度論 時は寛保二年頃。 この作中に出る人々の名は学者上りの若い浪人鈴懸紋弥。地方藩出の青年侍、鈴懸の友人二見十郎。女賊目黒のおかん。おかんの父。         一 上目黒渋谷境、鈴懸の仮寓、小さいが瀟洒(しょうしゃ)とした茶室造り、下手(しもて)に鬱蒼(うっそう)たる茂み、上手(かみて)に冬の駒場野を望む。鈴懸、炉(ろ)に炬燵(こたつ)をかけて膝

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界」1938(昭和13)年1月号

底本

  • 岡本かの子全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年7月22日