ほうえいふんか
宝永噴火

冒頭文

今の世の中に、こういうことに異様な心響を覚え、飽かずその意識の何物たるかに探り入り、呆然自失のような生涯を送りつつあるのは、私一人であろうか。たぶん私一人であろう。確(しか)とそうならば、これは是非書き遺(のこ)して置き度い。書くことによってせめて、共鳴者を、私のほか一人でも増して置き度い。寂しいが私はこれ以上は望むまい。 こういう序文が附加えられて、一冊の白隠伝の草稿が無理にわたくしの

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学界」1940(昭和15)年7月号

底本

  • 岡本かの子全集6
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年9月22日