トンカトントンカッタカッタ
トンカトントンカッタカッタ

冒頭文

トンカトンカトン トンカトンカトン これは隣りのシャフトから樋を通って来るベルトが樋板を叩いている音だ。 女工の一人はその音が可笑しいと言って側の女工と顔を見合せてウフフ、ウフフと唇をゆるめて笑っていた。 もげ落ちそうな狸腹をしている首には白粉を付けている若い女工が床に散らばっていた、縄くずに足を引からんで思い切りのめった。そしてその狸腹を冷たい堅い貫々玉にぶち付けた。彼

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸戦線」1926(大正15)年1月号

底本

  • 小林多喜二と『蟹工船』
  • 河出書房新社
  • 2008(平成20)年9月30日