きんざんそうわ |
金山揷話 |
冒頭文
稚内(ワッカナイ)ゆきの急行列車が倶知安(クッチャン)をすぎ、やがて山地へかかって速力がにぶると、急に雪が降りだした。粒が細かくて堅く結晶した雪だということは、車窓にふきつけるサッサッササ……という音でわかった。線路近くのエゾ松林に、防雪林などと書いた棒杭が見出された。その林の青黒い枝々はすでにかなりの雪を積らせていて、飛白の布地のように目を掠めてゆく。いうまでもなく、雪が急に降りだしたわけではな
文字遣い
新字新仮名
初出
「中央公論」1939(昭和14)年4月
底本
- 北海道文学全集 第12巻
- 立風書房
- 1980(昭和55)年12月10日