めいじざひょう (めいじにじゅうくねんしがつ) |
明治座評 (明治二十九年四月) |
冒頭文
明治座の一番目「明智光俊誉乗切(あけちみつとしほまれののっきり)」は三幕にて、山崎合戦より唐崎の馬別れに終る。例の通(とおり)「真書太閤記」も一二節に芝居の衣をかけしまでにて、かたりに記せる修羅場の読切といへるには適すれども、むづかしき戯曲論など担ぎ出すべきものに非ず。しかし光俊を見するなら、坂本の宝物渡しまで見すれば少しは筋が通れど、馬別れだけでは喰(く)ひ足りずとは女子供までが申すなり。
文字遣い
新字旧仮名
初出
「めさまし草 巻四」1896(明治29)年4月
底本
- 観劇偶評
- 岩波文庫、岩波書店
- 2004(平成16)年6月16日