せいぎ |
正義 |
冒頭文
「ほう、すると君は今日あの公判廷に来て居たのか。……そうだったのか」 「ええ、あの事件の初めから終りまで傍聴して居ました。あの、あなたが弁護してやってる森木国松(もりきくにまつ)っていう被告人ですね、あれが松村子爵(まつむらししゃく)を殺したとは僕にも一寸考えられませんよ。……あの事件当時、僕はずい分詳しく新聞を読んで居たんですがね」 「そうかね、僕は君のような芸術家があんな殺伐な犯罪事件に興
文字遣い
新字新仮名
初出
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
底本
- 「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10
- 光文社文庫、光文社
- 2002(平成14)年2月20日