チェーホフじょせつ ――ひとつのはんそていとして――
チェーホフ序説 ――一つの反措定として――

冒頭文

1 チェーホフは自伝というものが嫌いだった。——僕には自伝恐怖症という病気がある。自分のことがかれこれ書いてあるのを読んだり、ましてやそれを発表するために書くなどということは、僕には全くやりきれない。……そんな意味のことを、一八九九年の秋、つまり死ぬ五年ほど前に、同窓のドクトル・ロッソリモに書き送っている。 これが単なるはにかみであるか、それともほかに何かわけがあるのか、その辺

文字遣い

新字新仮名

初出

「批評 第六十二号」1948(昭和23)年11月

底本

  • カシタンカ・ねむい 他七篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年5月16日