こうやひじり |
高野聖 |
冒頭文
一 「参謀(さんぼう)本部編纂(へんさん)の地図をまた繰開(くりひら)いて見るでもなかろう、と思ったけれども、余りの道じゃから、手を触(さわ)るさえ暑くるしい、旅の法衣(ころも)の袖(そで)をかかげて、表紙を附(つ)けた折本になってるのを引張(ひっぱ)り出した。 飛騨(ひだ)から信州へ越(こ)える深山(みやま)の間道で、ちょうど立休らおうという一本の樹立(こだち)も無い、右も左も山ばか
文字遣い
新字新仮名
初出
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
底本
- ちくま日本文学全集 泉鏡花
- 筑摩書房
- 1991(平成3)年10月20日