しょくんのいち |
諸君の位置 |
冒頭文
世の中の、どこに立つて居るのか、どこに腰掛けて居るのか、甚だ曖昧なので、學生たちは困つて居る。世の中のことは何も知らぬふりして無邪氣をよそほひ、常に父兄たちに甘えて居ればいいのか。又は、それこそ、「社會の一員」として、仔細らしい顏をし、世間の大人の口吻を猿眞似して、大人の生活の要らざる手助けに努めるのがいいのか。いづれにしても不自然で、くすぐつたく、落ちつかないのである。諸君は、子供でも無ければ、
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「月刊文化學院 第二巻第二号」1940(昭和15)年3月30日
底本
- 太宰治全集11
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月25日