じしんのなさ |
自信の無さ |
冒頭文
本紙(朝日新聞)の文藝時評で、長與先生が、私の下手な作品を例に擧げて、現代新人の通性を指摘して居られました。他の新人諸君に對して、責任を感じましたので、一言申し開きを致します。古來一流の作家のものは作因が判然(はつきり)してゐて、その實感が強く、從つてそこに或る動かし難い自信を持つてゐる。その反對に今の新人はその基本作因に自信がなく、ぐらついてゐる、といふお言葉は、まさに頂門の一針にて、的確なもの
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「東京朝日新聞 第一九四五七号」1940(昭和15)年6月2日
底本
- 太宰治全集11
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月25日