まずしきぶんがくてきけいけん(ぶんだんへでるまで) |
貧しき文学的経験(文壇へ出るまで) |
冒頭文
(一)同人雑誌「十三人」 大正八年の秋頃、今実業之日本社に居る、たしか浅原六朗君から、今度、今年学校を出た連中のうちで、同人雑誌を発行することに決つたから、君も加はらないか、と誘はれた。下村と君しか僕は知らないんだから変だな、と私はたしか言つたのである。まつたく私は早稲田時分その二人しか自分のクラスでは話した者はなかつたのだ。それも、私は何時も後の方の席に坐つて居て、彼等も多分その近所に
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文章倶楽部 第十巻第六号(六月号)」新潮社、1925(大正14)年6月1日
底本
- 牧野信一全集第二巻
- 筑摩書房
- 2002(平成14)年3月24日