かれについいてのそうわ
彼に就いての挿話

冒頭文

井伏鱒二の作と人。 斯の題を得て私は、一昨夜彼のこれまでの作品——主として「鯉」から「シグレ島叙景」まで幾篇かの傑作佳作に就いて感ずるところを誌して見た。そして、また、昨夜は、それを書き続ける前に——と思つて、彼の単行本「夜ふけと梅の花」及び「なつかしき現実」の二部を取りあげて読みはじめたところが、凡て雑誌に発表された当時読んだものばかりでありながら、更に感興を強ひられること切りで、とう

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十八巻第一号(新年特大号)」新潮社、1931(昭和6)年1月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日