とうじつしょう |
冬日抄 |
冒頭文
(手紙を書く) * 空想は自然の隈どりだ、櫟林の奥で捕獲した一個のムラサキ蝶を験めようか! 樺色地に薄墨の豹紋を散らして、光りの屈折に随つては、真紫に輝く見るも鮮やかな幻色を呈するのだ。或ひは土の上を飛んでゐる一個のミチシルベをつまみあげて見ようか! シヤムや西蔵の仏像の色彩を連想する類ひのエメラルド・バミリオン、黒、白の斑点——何と、これが土の上に飛んで、土に隠れる警戒色な
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文藝通信 第二巻第二号(二月号)」文藝春秋社、1934(昭和9)年2月1日
底本
- 牧野信一全集第五巻
- 筑摩書房
- 2002(平成14)年7月20日