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冒頭文
「散髪して来よう。」 さう、思ひつくと、彼は、膝の上の夕刊を投げ棄てゝ、安座からむつくりと立ちあがつた。立ちあがつた彼は、如何にも退屈らしく「ウーム」と云つて大きな伸びをした。その彼の伸びは、彼が故意にさうしたのだつた。立ちあがつた動作が余りに唐突で、——といふ気がした彼は、ふと叔母の視線に触れて、ひよいと軽いながらも白けた感じをうけたので、それを、安易さをもつてナチュラルに解決しようといふ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「十三人 第三巻第五号(五月号)」十三人社、1921(大正10)年5月1日
底本
- 牧野信一全集第一巻
- 筑摩書房
- 2002(平成14)年8月20日